2025SS THE FIELD TRIP

小松空港から海沿いを車で1時間ほど走らせたところにひっそりと佇む機屋。
少し遅れて到着した私たちを案内の女性が笑顔で迎えてくれた。
工場内に入ると、私たちの製品に使用されている”pear skin(ピアースキン)”シリーズの経糸(たていと)と緯糸(よこいと)が重なり合って織られているところだった。
速度の異なる幾つもの規則的な音が混じり合い、まるで地下鉄の電車がすれ違う時のような、周りの全ての音を一瞬で塞いでしまう、独特のリズムが止まることなく続いている。
ENOFの2025春夏コレクションで使われる素材、pear skinシリーズは、極細の糸を幾重にも重ねることで生まれる、軽やかでありながら透けにくい特性をもつテキスタイル。真夏にまとう美しいウェアにはふさわしい素材といえる。
幾度も試作を重ねた末にたどり着いた、現在の光沢感と軽さがベスト、と社長自ら語ってくれた。
その言葉一つひとつから、仕事に対する熱意と彼らがつくる製品への自信が伝わってくる。
目視と手作業で行う検品作業は、長年経験を積んだ者だけができる職人技といえる。
撮影をさせてもらうと、少し照れくさそうにしている女性の表情も印象的だった。


織機の経糸(たていと)は1本1本人の手で通していかなければならない。この作業の多くは女性従業員が担っており、その繊細さと根気の要る工程について、「自分には到底できない」と語っていた工場長の言葉が思い出された。
一つひとつ時間をかけて、いくつもの工程を経て完成する製品。無駄のない丁寧な物造りを現実にする為、最小ロットで生産を進めてくれている。
多くの人の手により成り立っていることを忘れてはならないと改めて実感する旅となった。